社会保険各制度の加入の条件は、「会社が社会保険に加入する条件」のページの通りですが、 ここでは各制度の目的や内容と保険料について、あらためて確認します。
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労災 雇用保険 健康保険 厚生年金
保険料
一般的に「労災」と呼ばれるのは労働者災害補償保険という制度で、業務または通勤行為によって生じたケガの治療、それに伴う休業、障害、死亡等に対し、給付を行う制度です。
労災の保険給付としては、診察・治療を労災病院または指定病院で無料で受けられる(「療養の現物給付」という内容)療養補償給付、 療養のために休業した場合に支給される休業補償給付(休業4日目から)、障害が残った場合に支給される障害補償給付(障害の程度により年金または一時金)、 死亡した場合に一定の遺族に対する遺族補償給付(遺族の要件により年金または一時金)などがあります。
なお、業務上のケガに対し健康保険を使うことは、健康保険が「業務外の事由による」ケガ・病気への保険給付を行うことを目的としていることから、法令違反となりますので注意が必要です。
また、労災について、「労災を使うと保険料が高くなる」という意見を聞くこともありますが、メリット制が適用されていない会社では、保険給付の回数や額は保険料の増減に影響ありません。
メリット制
保険給付の額により労災保険料の増減がある制度で、保険関係成立後3年以上経過しており、次のいずれかに該当する場合に適用される。
@100人以上の労働者を使用する事業
A20人以上100人未満の労働者を使用する事業では、
使用労働者数×(労災保険料率−非業務災害率)≧0.4
である
B一括有期事業の場合、確定保険料(連続する3年度の各年度の)が100万円以上
雇用保険は、従業員が退職し求職している期間に対する給付(求職者給付)を行う他、在職中の従業員に対しても雇用の継続を促進するために、育児・介護休業期間中に対する給付、高齢者が勤務継続し、賃金が低下した場合への給付などの雇用継続給付を行います。
また、在職中または離職された方が、被保険者期間が継続して3年以上である場合など一定の要件を満たしている場合に、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講し、 終了した場合に受講料等の一定割合を支給する教育訓練給付の制度もあります。
健康保険は、被保険者の業務外に起きたケガ、病気、死亡、出産に対する保険給付と、被扶養者のケガ、病気、死亡、出産に対する保険給付を行うことを目的としています。
身近なものでは、病院に行き、健康保険証を提示して治療を受けることは、健康保険による「療養の給付」を受けていることになります。
この他にもケガや病気の療養のため継続して4日以上休業した場合に支給される「傷病手当金」、出産した場合には「出産一時金」と産前産後の休業期間中に対して「出産手当金」が支給されます(扶養家族には傷病手当金、出産手当金は支給されません)。
健康保険の被扶養者は、被保険者による生計維持関係が認められる3親等内の家族であることが第一条件です(配偶者の父母、甥姪など一定の家族は同一世帯にいることも条件になります)。
「生計維持関係」とは、その扶養家族の年収が被保険者の年収の1/2未満(同居していない場合は仕送り等の額より少ないこと)で、130万円未満(60歳以上または一定の障害の状態にある方は180万円未満)であることなどが基準になります。
厚生年金は被保険者への老齢、障害、死亡に対して保険給付を行うことを目的とします。
保険給付は、基本的には国民年金の給付に対する「上乗せ」という内容です。
年金というと「老後の給付」というイメージが強いですが、障害や死亡に対しても年金給付を行います(障害の場合は等級に応じ年金または一時金)。
また、厚生年金は健康保険と異なり、業務上の事由による障害、死亡についても保険給付を行います。
なお、厚生年金では、老齢厚生年金を受給されている方が勤務し、厚生年金の被保険者となっている場合に、受給する年金額と給与の額により年金の調整を行う在職老齢年金制度があり、 高齢者の継続雇用と関連して近年話題となっています。
社会保険の各制度の保険料の納付は次のようになります。
労災と雇用保険の保険料はあわせて「労働保険料」として、毎年度(4/1〜翌3/31)概算額を納付し、年度終了後、翌年度の初めに保険料の確定額と納めた概算額との差額を精算します。
保険料額は、賃金の額×業種ごとに定められた保険料率により算出します。
(※建設業等の有期事業は別の方法による)。
また、労災が適用される事業では、アスベスト健康被害救済のための「一般拠出金」も申告・納付します。
「一般拠出金」の率は全ての業種で0.05%。確定保険料の申告と併せ申告・納付します。
雇用保険料率は下表の通りです。H24.4/1から雇用保険料率が改定されます。
雇用保険料率 ()内は労働者負担 | ||
〜H29.3/31 | H29.4/1〜 | |
一般の事業 | 11/1000 (4/1000) |
9/1000 (3/1000) |
農林水産、清酒製造の事業 | 13/1000 (5/1000) |
11/1000 (4/1000) |
建設の事業 | 14/1000 (5/1000) |
12/1000 (4/1000) |
保険料負担は、労災は全額が会社負担、雇用保険は会社と従業員でそれぞれ負担します。
雇用保険料の従業員負担分は、従業員に給料を支払うつど、その給料から控除します。
健康保険・厚生年金の保険料は、毎月その月の分を翌月末日までに納付します。
保険料は、従業員の給料を「標準報酬月額」に当てはめて保険料率を乗じ、算出します。
保険料率は、健康保険は管掌が全国健康保険協会である場合、都道府県ごとの保険料が設定されています。
厚生年金は、H29.9分より18.3%(厚生年金基金加入員の場合を除く)となっています。
保険料負担は、会社と従業員で折半負担となります。保険料の給料からの控除は、前月分の保険料を、その月の給料から控除することとなります。
社会保険の保険料の計算の対象となる給与は、次のように定められています。
(労災・雇用保険では「賃金」、健保・厚生年金では「報酬」と呼びます)
労災・雇用保険:労働の対償として事業主が従業員に支払う全てのもの
対象となるもの |
基本給、技能手当、時間外割増賃金、家族手当、住宅手当、通勤手当(定期・回数券などの現物も含む)、役職手当、地域手当、賞与 など |
対象とならないもの |
結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金、私傷病見舞金、年功慰労金、出張旅費・宿泊費で実費弁償的なもの、休業補償費、解雇予告手当(労基法20条に基づくもの)、退職金 など |
健康保険・厚生年金:労務の対償として事業主が従業員に支払う全てのもの
対象となるもの |
基本給、技能手当、時間外割増賃金、家族手当、住宅手当、通勤手当(定期・回数券などの現物も含む)、役職手当、地域手当、 など |
対象とならないもの |
結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金、私傷病見舞金、出張旅費・宿泊費で実費弁償的なもの、解雇予告手当(労基法20条に基づくもの)、退職金、賞与(※) など |
※健康保険・厚生年金の賞与 |
なお、通勤手当で定期代を3ヶ月・6ヶ月というように数か月分支給している場合、健康保険・厚生年金では、その額を1/3や1/6に按分した額を算入して報酬月額を計算します。
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