賃金については、賃金支払いの原則、時間外勤務、休日出勤の割増賃金の基礎となる賃金についての情報を掲載致します。
賃金支払については、「賃金支払の5原則」と言われるものがあります。
「賃金支払の5原則」とは、
支払うこと、と定められています。
「通貨で」というのは、小切手や現物での支払いは原則禁止ということです(労働組合との労働協約がある場合には適法)。
なお、給与を銀行振込とする場合、本人の同意に基づき、本人名義の口座に、賃金支払日の午前10:00頃までに払い出しが可能であることを要件としています。
「直接本人に」とは、本人以外の代理人や債権者への支払が禁止されていることを意味します。
ただし、従業員の子などが本人の指示の下、単に「使者」として本人の印鑑を持参して本人名義で受け取りに来る場合には適法となります。
「全額を」について、所得税の源泉徴収や社会保険料の控除は、法令により事業主に徴収・納付の義務があるため、控除することは適法というよりは事業主の義務となります。
給食費や社員互助会の費用などを会社で独自に徴収する場合は、従業員の過半数代表者と賃金控除に関する労使協定の書面での締結が必要となります。
「毎月1回以上」は、年俸制などであってもこの支払い方法の定めが適用となります。
(賞与はこの定めの適用外)
「一定期日に」における「一定期日」は暦日で定める必要があります。
曜日の指定では毎月の支払日が変動するため、これに該当しません。
労働基準法には、法定時間外労働や法定休日労働、午後10:00〜翌午前5:00の深夜勤務に対して、1時間あたりの賃金に一定の割増率を加算した割増賃金を支給すること、と定めています。
割増率は、法定時間外労働の場合が25%以上、法定休日出勤の場合が35%以上、深夜労働の場合が25%以上と定められています。
条件が重複する場合もあり、法定時間外かつ深夜労働の場合には50%の割増賃金、法定休日労働かつ深夜労働の場合には60%の割増賃金が発生します。
(なお、法定休日の出勤で残業が発生した場合には、割増率は重複せず、35%のままとなります。)
この割増賃金を計算する際に、次の賃金は計算の基礎から除きます。
これらの賃金を割増賃金の計算から除くかどうかは、名称ではなく内容によって判断されます。
この中でも特に注意を要するのは、家族手当、通勤手当、住宅手当です。
これらの手当が割増賃金の計算上除外を認められる要件とは、扶養家族の数や通勤距離、家賃の額などに応じ支払われているものであることで、これらに関わりなく一律定額で支給されている場合などは計算からの除外が認められません。
H22.4より労働基準法が改正され、月60時間を超える時間外労働に対する割増率が25%から50%に引き上げられました。
この割増率の引き上げは、中小企業(「資本金の額または出資の総額」または「常時使用する労働者の数」により判断。事業場単位ではなく企業単位。)には
当分の間、適用が猶予されます(法の施行3年経過後に改めて検討)。
業種 | 資本金の額または出資の総額 | 常時使用する労働者の数 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
なお、引上げ分の割増賃金の代わりに有給休暇を付与する制度(代替休暇)も新たに認められ、労使協定締結の上でこれを実施することもできます。
また、月60時間以内の時間外労働も、時間外労働・休日労働に関する労使協定(「36協定」)の限度時間を超える時間外労働については法定割増賃金率(25%)を超える率とするように努めること、と定められました。
社会保険の保険料の計算の基礎となる賃金については、「社会保険各制度の概要」の「保険料の基礎となる賃金」をご覧下さい。
賃金に関する法律上の定めとしては、上記に挙げたものの他、最低賃金(地域・特定の業種で定められる基本賃金の最低額)などがあります。
「どのような手当をどのような基準で支給するか」の設計は各企業によって行うところですが、より有効に賃金制度を機能させるためには、上記に挙げたものをはじめとする法律上のポイントも抑えておくことが重要です。
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